「アスペルガー症候群に特化した就労支援マニュアルESPIDD」
書評
「アスペルガー症候群に特化した就労支援マニュアルESPIDD」梅永 雄二/ 井口 修一 著
その3
前前回、前回に続き、今回も「アスペルガー症候群に特化した就労支援マニュアル ESPIDD」の書評をしていきます。
この本の第3部はESPIDDによる各支援機関の具体的な支援例が書かれています。
ESPIDDを具体的に取り入れている支援機関として、
などがあります。
1,東京障害者職業センターによる支援例
ほとんどのケースで、「職業相談」「職業評価」「職業準備支援」「就職活動支援」「ジョブコーチ支援」「職場定着支援」
などを組み合わせて支援する必要があります。
1.1 気分の問題を抱えている広汎性発達障害の方
→この方には疲労・ストレスのセルフスキルを高めることが有効でした。
1.2 コミュニケーションの問題を抱えている当事者
→職業シートおよび職業実習アセスメントシートを活用したことが有効でした。
2,発達障害者支援センターにおける実践事例
→ESPIDDの職場実習アセスメントシートを使ったようです。
3,就労移行支援事業所による実践事例
→こちらは職業実習アセスメントシートを使ったようです。
4,特例子会社における実践事例
ハードスキル自体は非常に高いシステムエンジニアの人の話です。
流れは
親会社が人材サービス会社の特例子会社に障害者雇用枠で入社しました。
↓
最初は順調だったのですが、
↓
新しい上司が来て関係悪化します。
↓
そして不適応行動を起こすようになります。
ここでは企業在籍型ジョブコーチによる支援が行われました。情緒面で問題を抱えていたのですが、こちらも「職場実習アセスメントシート」を取り入れることで問題を「見える化」しました。
企業在籍型ジョブコーチによる支援が可能だったのは、特例子会社だからできたことでもあります。そういう意味で、特例子会社などでの支援はマネジメント層の理解が必須であることがわかります。
ここではESPIDDのツールを追跡調査に導入しているそうです。
全体の感想として
ひととおり全体を見ての感想ですが、発達障碍者に対する就労支援としては、まず、
職業実習アセスメントシートの作成
などのアセスメントが一番大事なのだなと感じました。実際、梅永先生の講演でも、「アセスメントが一番大事で、それがないと動けない」とおっしゃっていました。
発達障害者に対する就労支援としては、TTAPのような「知的障害をともなう」発達障害者に対するプログラムの方が充実していて、「知的障害をともなわない」発達障害者に対するプログラムの方が、なかなかデータが取れなくて、メソッドとして確立されていなかったのですが、ようやく形としてできてきたようです。T-STEPも早くメソッドとして確立してほしいです。