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発達障害の方が抱える就業継続困難性

発達障害の人の職場定着率の低さ

発達支援に関わっている人にとっては常識の部類に入っていることかもしれませんが、いろんな障碍をもっている方の中でも、発達の人が特に就業継続に困難を抱える人が多いのです。知的障害、身体障害の方は最初に就職するまでのハードルは高いのですが、一度職場環境に定着できると、かなり定着率が高くなる傾向があります。一方、発達・精神の人の方は、なかなか定着率は上がらず、一般の高校、大学を卒業しても結局職場になじめず、長期に渡ってニート、引きこもりになることが多いのです。

 

実はアメリカでも同じ

これは実は日本に限ったことではなく、アメリカでもそうだというのが、梅永雄二先生の講演を拝聴してもわかりました。アメリカは日本よりもずっと自閉症研究が進んでいるから、ニート、引きこもりは少ないに違いない、という幻想を持っていらっしゃる方も多いのですが、実際にはアメリカでも、知的障害・身体障害の方よりも、発達障害の方の方が家庭で引きこもっている人が多いのです。アメリカでも、ノースカロライナ大学のTEACCHプログラムを導入して成功しているところは結構定着率が高いのですが、アメリカ全体では日本とあまり変わりがないというのが実情です。

 

理解してもらえない

発達の人は見た目が定型発達の方とあまり変わりがない方も多いのですが、いわゆる「普通の見た目」であるにも関わらず、特定の作業ができなかったり、対人のこだわり・トラブルを引き起こし、怒られたり、やる気がない、という評価を与えられ、自信を失って引きこもる、という日本と同じパターンになるのです。

知的障害・身体障害の方の方が、雇い主からすれば、「この人は何ができる、何ができない」ということがわかりやすいので、仕事を与えやすいのかもしれません。

就労移行支援サービス

もちろん、支援者や公共のサービスも、「発達障碍の方は就業継続に問題を抱えやすい」という事情を理解し始めており、例えば

就労移行支援サービス

という形で、発達障碍の方に対して、社会性を始めとする職業訓練、就業援助のようなサービスを提供し始めております。

高校生、大学生の段階での支援が本来は必要

それでも、まだ高機能自閉症、広汎性発達障害(この分類は最近は使わないですが)の方に対して、人生全体を見据えた、職業訓練、就業支援が行われているわけではありません。特に高校生、大学生の高機能自閉症、広汎性発達障害の方に対する支援は始まったばかりです。現在この分野の支援が大事というコンセンサスはあるようですが。

身体障碍の方と比べて、高機能自閉症、広汎性発達障害の方には、社会生活を維持する上でどのような支援が必要なのか一般の方には見えにくい、という問題が一番の理由でしょう。知的障害・身体障害の人は主に支援学校等で具体的な職業訓練ができるようになっているのと対照的です。ときどきニュースにもでてきますが、学業は優秀なのに、様々な場面でトラブルを起こす東大生・東大卒の残念な人のうちの一定数は高機能自閉症、広汎性発達障害の方たちだと思われます。

 

ライフスキルサポーターに必要性

梅永雄二先生は、このような人たちには就業とそれいこうの定着を支援する「ライフスキルサポーター」のような人間が必要だ、と提唱されています。